
BUCK-TICK - 殺シノ調べ This is NOT Greatest Hits(リメイクアルバム)
※6thと7thアルバムの間にリリース
1992年3月21日リリース
●収録曲1. ICONOCLASM2. 惡の華3. DO THE "I LOVE YOU"4. VICTIMS OF LOVE5. M・A・D6. ORIENTAL LOVE STORY7. スピード8. LOVE ME9. JUPITER10. ...IN HEAVEN...11. MOON LIGHT12. JUST ONE MORE KISS13. TABOO14. HYPER LOVE
27年前の今日リリース。
前回紹介した「狂った太陽」同様、このアルバムもリアルタイムで死ぬほど聞きまくった思い出深いアルバム。
※関連過去ログ
特徴としてはスタジオアルバムではなく、ベスト盤的要素のあるリメイクアルバムと言ったところ。Wikipediaではなぜか「セルフカバーアルバム」なんて書かれていたけど、いやそれは違うでしょって話。
※セルフカバーは、他者に提供した楽曲を、作詞者或いは作曲者が自らカバーすることなので。
なので、どちらかと言うと、TM NETWORKの「DRESS」のような、「リプロダクトアルバム」に近いと思う。
とはいえ、リミックスを全て外部に発注したTMとは異なり、リミックスはおそらくを全て自分たちでやっているし、なんなら全部リテイクしているので、確かになんて呼んでいいかわからんですね。
ということで、面倒だけど、全曲解説しますかね。
1. ICONOCLASM作詞・作曲:今井寿元アルバム:4th ALBUM「TABOO」
元アルバム「TABOO」でも1曲目に収録されていた楽曲。
オリジナルバージョンの方は、サイレンのようなギターのリフからキックの4つ打ちが追いかけてきて、櫻井敦司の呟きのような低音ヴォイスでのじっとりとしたヴォーカルによるものだった。
しかしこちらでは、デジタルの効果音がいきなり耳に飛び込んできて、早速「ただのリメイクアルバムではない」ということを強く示している。
櫻井敦司のヴォーカルも、オリジナルのつぶやきスタイルではなく、シャウト中心のものになっており、全体的なサウンドアレンジもインダストリアルなものになっている。
これはこれでかっこいいけど、後にD'ERLANGERやLUNA SEAのBs. Jがトリビュートしたやつのほうが好きかな。
J / ICONOCLASM (BUCK-TICK TRIBUTE ALBUM)
2. 惡の華作詞:櫻井敦司、作曲:今井寿元アルバム:5th ALBUM「悪の華」
こちらのアレンジについては、全体的な作りとしてはそこまで大幅に変わったわけではないが、印象としては「より太くとんがった」という印象。
ギターフレーズが大幅に変わっており、個人的にはこっちのほうが好き。でも曲の最後の方での「I~I fallin' down」のヴォーカルのくだりが無くなったのが残念。あすこめっちゃかっこいいのに。
3. DO THE "I LOVE YOU"作詞・作曲:今井寿元アルバム:2nd ALBUM「SEXUAL×××××!」
最初聞いた時は、オリジナルバージョンを知らない状態で聞いたんだけど、後からオリジナルを聞いたら大分ポップで、こっちのアレンジのほうがはるかにカッコいいと思った。(因みに貼り付けた動画リンクはオリジナルバージョンでのライブ演奏)
オリジナルの軽快な8ビートから一変して、大胆にシャッフル的なハネるビートのアレンジ(厳密にはシャッフルではないけど)を施したのは、非常にうまいなと思う。曲の世界観ともよく合ってると思う。
また、イントロ前での今井寿による、おそらく変則チューニングによるものと思われるギターのインプロヴィゼーション(と思われるもの)がいい感じの伏線になっていて尚良し。このアルバムの中でもかなり好きな曲。
4. VICTIMS OF LOVE作詞:櫻井敦司、作曲:今井寿元アルバム:3rd AALBUM「SEVENTH HEAVEN」
これもオリジナルを知らずに聞いたけど、大幅に変わったわけではない。
とはいえ、BPMが大分遅く設定され、間奏も長くなっていることから、曲の長さがいささか冗長に感じることもあり、ぼくはあまり好きではない。
5. M・A・D作詞:櫻井敦司、作曲:今井寿元アルバム:6th ALBUM「狂った太陽」
このアルバムの中での、ある意味一番の問題作w
Wikipediaなんかにも記載されているけど、このアルバムの制作にあたってレコード会社側から「ベスト盤として強く打ち出したいから」という要望(というより命令)があったため、「狂った太陽」からどうしてもシングル曲を入れ無くてはならないという状況に。
そんな中、この曲については、オリジナルで既に「完成された感」があったため、当時今井さんは「こうするしかなかった。アレンジの仕様がなかったのでぶっ壊すしかなかった」というようなことを発言している。
でも、当時今井さんが傾倒していた「インダストリアル路線」との噛み合わせは非常に良くて、タイトルの「MAD」感は非常にうまく表現されていると思う。
言うなれば、オリジナルバージョンのMADは「第一形態」で、こちらは新劇場版エヴァンゲリヲン破で「裏コード:ザ・ビースト」になったエヴァンゲリオン弐号機みたいなイメージ。
6. ORIENTAL LOVE STORY作詞:櫻井敦司、作曲:今井寿元アルバム:3rd AALBUM「SEVENTH HEAVEN」
これも、このアルバムで初めて聞いた。
確か、オリジナルの方は、かなり眠たくなるくらいのゆったりとしたBPMだったのに対して、フロアタムによるジャングルビートで、力強くなっている。
このアルバムがリリースされた時期に出演したMステで、何故かこの曲を演奏していたのが、かすかに記憶に残っている。
7. スピード作詞:櫻井敦司、作曲:今井寿元アルバム:6th ALBUM「狂った太陽」
前曲からそのまま繋がっているが、やはり「狂った太陽」の楽曲なので、そこまで大きな変更はない。ただ録り直したってだけ。
8. LOVE ME作詞:櫻井敦司、作曲:今井寿元アルバム:5th ALBUM「悪の華」
これは、「DO THE "I LOVE YOU"」や「M.A.D」同様、かなり大胆にアレンジされている。
元曲は割とファストテンポだったのに対して、こちらは大分テンポダウンさせて16ビートっぽくして、全体的にマイルドというか、甘ったるい感じのアレンジになっている。
まあ、正直あまり好きではないですねw
9. JUPITER作詞:櫻井敦司、作曲:星野英彦元アルバム:6th ALBUM「狂った太陽」
こちらも「狂った太陽」のシングルから、「強制的に入れさせられた」曲ということで、もうね、何ていうかこれが一番可愛そうな曲だと思うw
当時のインタビュアーからも「苦肉の策」とか言われちゃうくらいに苦肉の策で、変更点としては、イントロの前に男声によるゴスペルが入っているのと、インテンポのタイミングが異なるくらいじゃないですかね。
ま、いつも飛ばしててちゃんと聞いてないからよくわからんのですけどwにしても、この曲はホントいらなかったと思う。
10. ...IN HEAVEN...作詞:櫻井敦司、作曲:今井寿元アルバム:3rd ALBUM「SEVENTH HEAVEN」
このアルバムで一番盛り上がる曲のうちの1つ。次曲の「MOON LIGHT」と繋がっている。
オリジナルは知らずにこのアルバムで知ったのだけど、アレンジは大きくは変わってないけど、初期の曲が「狂った太陽」を経てより太く力強くなっているので、このアルバムの中でのこの曲の存在感や破壊力はかなり大きい。
ビート的にはまっすぐストレートな8ビートで、BPM的にも結構速めなので、ビートロック好きにはたまらない。
当時高校1年くらいだったと思うけど、ぼくは1人でひたすらこの曲のドラムをコピーしていた。多分、その気になれば今でもフレーズ自体は覚えているはず。うまく叩けるかどうかは別にして。
11. MOON LIGHT作詞:櫻井敦司、作曲:今井寿元アルバム:1st ALBUM「HURRY UP MODE」
前曲からそのまま立て続けに入っていく。これも最初期の曲ということでオリジナルを知らなかったため、最初このアルバムで聞いた時、どこで曲が変わったのかわからなかった。
元曲自体が最初からそうだったけど、音の作りとかアレンジを前曲に大分寄せているので、曲自体が非常に似ている印象。もうなんて言うか、双子の兄弟というかニコイチみたいなイメージがあるので、この曲については「...IN HEAVEN...」とセットじゃないと聞けない。
12. JUST ONE MORE KISS作詞:櫻井敦司、作曲:今井寿元アルバム:4th ALBUM「TABOO」
この曲って、兎角「BUCK-TICKの代表曲」みたいに扱われているけど、実はあまり好きではないんですよねー。
主な変更点としては、途中のセリフ部分に日本語が加わり、それがはっきりと聞き取れるようになったってくらいじゃないですかね。
13. TABOO(Interlude melody taken from "TABOO" by Lecuona Margarita )作詞:櫻井敦司、作曲:今井寿元アルバム:4th ALBUM「TABOO」
この曲は、オリジナルでは「艶めかしさ」に重きを置いていたと思うんだけど、このバージョンではどちらかと言うと「妖しさ」の方に重きが置かれている。
アレンジ的にも逆にテンポが早くなっている気がするし、音数も増えてドラムもボサノヴァっぽいリムショットを入れたりだとか、ギターも変則的なスケールで、言わばサイケデリックと言うか、グニャグニャしてる印象。
オリジナルでもそうだったんだけど、曲タイトルに「Interlude melody taken from "TABOO" by Lecuona Margarita」と追記されているように、マルガリータ・レクオーナという女性歌手の1930年代のラテンの名曲である「TABOO」のメロが引用されている。
加藤茶の「ちょっとだけよ~」の時に流れてる曲って言えばわかりやすいか?と思ったけど、このネタ自体も今の若い子等は知らない可能性あるなw
14. HYPER LOVE作詞・作曲:今井寿元アルバム:2nd ALBUM「SEXUAL×××××!」
この曲も初期のものだったので、オリジナルはあまり良く知らない。でも、メジャー1stでもある「SEXUAL×××××!」の曲というのがちょっと意外。更には今井寿の歌詞ってのも意外。
この曲についてはオリジナルもこのアルバムでも殆ど聞いてなかったんで、あまり書けることがないですねw
まとめ~サブタイに込められた意味について
そもそもこのアルバムは、彼らにとってのターニングポイントとなった「狂った太陽」で得た知見を元にして、過去の曲を作り直してみようというコンセプトで作られている。
このため、サブタイトルとして「This is NOT Gratest Hits」と銘打たれている。
でも、ここまでぶっ壊したりリメイクしていれば、誰もベスト盤だなんて思わないのに、なんでわざわざそんなサブタイトルを付ける必要があったのだろうと長年不思議だった。
しかし、解説中にも記載したように、レコード会社により強制的にシングル曲を入れられ、そもそもリメイクする必要のない楽曲を無理やりリメイクしなければならない状況になったことで、大分苦労させられたらしい。
なのでこのサブタイトルは、メンバーのレコード会社に対する抗議的な意味合いが多分にして含まれているために、わざわざ「NOT」と、ここだけ大文字にして、更にダメ押しとばかりにアンダーラインまで引いて「ベスト盤じゃねーぞ!」ということを強調しているように思える。
そういうところも含めて、非常に「BUCK-TICKらしさ」というものがよく現れたアルバムなんじゃないかと思う。
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