クソ面白かった。
特に、まえがきでのこの一文で爆笑した。
「闇」だったり「絶望」だったり「破滅」だったり「堕落」だったり「破壊」だったりと、まさにネガティヴィティーの大博覧会状態。しかしそんな「ダメであること」を、恐ろしいまでのパワーと情熱でもって緻密に表現する姿勢はどう見てもポジティヴなのだから、可笑しいじゃないか。このギャップは、凄い。
これこれwめっちゃ笑ったwホントその通り過ぎてw
構成としては、ヴィジュアル系を知る4人のミュージシャンとの対談形式をとっており、それぞれ微妙に世代が異なるところから、「ヴィジュアル系(V系)の起原~第二次ヴィジュアル系バンドブームの終焉まで」を語っている。
因みに本書に登場する4人のミュージシャンは、下記の通り。
1. 大槻ケンヂ(筋肉少女帯、特撮)
2. YOSHIKI(X JAPAN)
3. SUGIZO(LUNA SEA)
4. キリト(PIERROT)
更に最後には、市川哲史と同時期、ヴィジュアル系黎明期からビジュアル系を書いてきた「大島暁美」さんとの対談もあり、これもまた非常に面白かった。
1. 大槻ケンヂ(筋肉少女帯、特撮)

ここに関しては、V系当事者かというと微妙なところだと思うんだけど、所謂「第二次バンドブーム真っ只中にいた畑違いの当事者」としての目撃証言だったり、交友関係的なエピソードが中心。まあ、それだけに最も中立的な立場で当時のシーンについて語っているとも言える。

ここに関しては、V系当事者かというと微妙なところだと思うんだけど、所謂「第二次バンドブーム真っ只中にいた畑違いの当事者」としての目撃証言だったり、交友関係的なエピソードが中心。まあ、それだけに最も中立的な立場で当時のシーンについて語っているとも言える。
2. YOSHIKI(X JAPAN)

はっきり言って、読んでいてイライラした。
はじめに断っておくと、このブログでは何度か書いてきていることだと思うけど、ぼくは「X」に出会って人生が変わったうちの1人で、彼の作り出す楽曲や世界観には、多大な影響を受けていた。
客観的に見ても、確かに彼が遺したてきたものは偉大だと思う。多くのフォロワーを生み、日本の音楽業界そのものに影響を与えた。それは認める。
しかし彼の何が許せないって、過去にも言及したことがあるけど、アメリカのロックフェラーセンターで仰々しく記者会見ををおこない、鳴り物入りでアメリカの超一流レーベルと契約し、レコーディングにものすごく莫大なバジェットとヒューマンリソースと、何より一番貴重な「時間」を割いておきながら、結局、CDは1枚もリリースしてないってところ。つまり「何一つ残せてない」わけですよ。

はっきり言って、読んでいてイライラした。
はじめに断っておくと、このブログでは何度か書いてきていることだと思うけど、ぼくは「X」に出会って人生が変わったうちの1人で、彼の作り出す楽曲や世界観には、多大な影響を受けていた。
客観的に見ても、確かに彼が遺したてきたものは偉大だと思う。多くのフォロワーを生み、日本の音楽業界そのものに影響を与えた。それは認める。
しかし彼の何が許せないって、過去にも言及したことがあるけど、アメリカのロックフェラーセンターで仰々しく記者会見ををおこない、鳴り物入りでアメリカの超一流レーベルと契約し、レコーディングにものすごく莫大なバジェットとヒューマンリソースと、何より一番貴重な「時間」を割いておきながら、結局、CDは1枚もリリースしてないってところ。つまり「何一つ残せてない」わけですよ。
他にも、「ライブが1時間半押し」とかの常習だったりもして、しかもそれを何も悪びれもせずに語っているとか、これ、マジでプロとしてっていう以前に「社会人として」終わっているでしょって話で。
ま、とはいえ、そうしたぼく個人の感情的な部分は抜きにしても、YOSHIKIの項に関しては、当時死ぬほど「Arena37」とか「Fool's Mate」とか「SHOXX」とか読んでいたので、単に昔の記事を読み直しているのに近い感覚だった。
なので、YOSHIKIのところだけ、一切チェック(ドッグイア)は入れていなかった。入れる必要もない。
3. SUGIZO(LUNA SEA)

主に、LUNA SEAのことやSUGIZO自身の話が多かったが、「ヴィジュアル系」というシーンとリンクした話ということで言うと、オーディエンスがコスプレしてくることについてSUGIZOは、「お客さんに真似させたかったから」ということも言っている。
また、そうした戦略的な部分を指して市川氏は、YOSHIKIとの共通項を見出したということも書かれていて、非常に興味深かった。
でも、LUNA SEAの(或いはSUGIZOの)フォロワーがたくさん出てきたことが、実は自身がすごく嫌だったということを語っているところが一番印象深かった。
そのフォロワーの音楽をちゃんと聞いてみて、「めっちゃやべえよ、かっこいいよこいつ!」って思えればさ、「おれ、いい影響を残せた、ラッキー」って思えるじゃん。でも残念ながら音楽的に何も感じることのないものばっかで――おれたちみんなこれだけやってきて、次の世代に残したものが「あの」インパクトのあったヴィジュアルだけなんだなーと思ったら、すごいやるせなかったな。
更には、やはり兄貴分であった「hide」の死が精神的にかなり堪えたというところから、追悼の意でやっていた「ショッキングピンクのヘアカラーを辞めた時に、SUGIZOの中でのヴィジュアルに関しては終わった」というところが印象的だった。
確かに「hideの死=V系の死」と同義みたいなところはある。
4. キリト(PIERROT)

やはりなんと言っても、対談前のまえがきにて引用されている、かつてのサマソニ的な洋楽中心のフェスでの爆弾MCが、鳥肌立つくらいかっこいいと思った。ちょっと長くなるけど、ここはぜひ見ていただきたい。
「洋楽ファンのみなさん初めまして。僕らがあなたたちの大嫌いな日本のビジュアル系バンドです。今日はそれを承知でやってきました。
えー、洋楽ファンの方たちにとってはこの時間がトイレタイムということで(笑)みなさん相かわらず外人相手にヘラヘラやってますか?日本人が憎くてしようがないですか?あなたたちの国籍はいったいどこなんでしょう。
そしてこの中でどれだけの方が外人とセックスするためにスタッフからバックステージ・パスをもらっているのでしょう。きっと今、僕はめちゃめちゃ憎まれてるんでしょうね(笑)
ピエロファン聞いてるか?えー今日はやはり外人にヘイコラしてる洋楽雑誌や評論家なんかも(笑)、悪い意味で注目してるみたいなのでさっきトイレに立っていった人たちも含めて”まあだやってんのかよ”ってくらいタップリやってやるから俺たちの気狂いぶりを見せつけてやろうぜ!」
著者の市川氏はPierrotのことを、「エクスタシー一派⇒黒夢+L'Arc~en~Cielという、正に商業的成功を収めた音楽バブル末期にかろうじて引っかかった最後の世代」としていたが、その中でもとりわけPierrotはこうしたアナーキズムが強い印象をぼくも持っていた。
V系というと兎角「世界観重視」というところがあるけど、Pierrotの場合、世界観と言うよりかは「思想が強いバンド」なのかもしれない。
だからなのか、「V系(ヴィジュアル系)」という呼称のされ方・カテゴライズのされ方について、以下のように語っていることに、非常に強い共感と好感を得た。
言われ方に関してはねー、結局「言われる側があれこれ言っても言う側は知ったこっちゃねえだろ」っていう。だから別に、かっこつけとか意地とか関係なく、どうでもいいというか。
だって多分何やっても、何かしら変な呼び方するでしょ。どうせバカにしたい人たちはね<なんとか系>って勝手に名付けるんだろうし、そういうのにいちいち目くじらを立ててもかったるいっちゅうか、元々気にないっちゅうか。
そうそう。これですよ。
これについては、かつてラルクが「ヴィジュアル系」と言われたことに腹を立てて、生放送の番組を途中退場したりとか、TETSUの著書か何かでそうした風潮を痛烈に批判していたようですけど、ぼくから言わせれば「バカか」って話でね。
そもそもの話として、かつてそういう格好してたんだし、たとえ脱ビジュアルしてカジュアル化を図ったところで、元からカジュアルのバンドよりかはV系的要素や名残があるんだから、そう呼ばれるのはしょうがないだろって話なんですよ。
なので、そんなことをいちいち気にする必要なんてのはないじゃないですか。引用でキリト氏も言っているように、人なんてすぐに「~系」って言うカテゴライズをするんだから。
で、それこそ「V系(ヴィジュアル系)」って、なんで「ヴィジュアル系」なのかと言ったら、「音楽的特徴やジャンルで括ることが難しいから」なわけですよ。
音楽的な意味でのジャンルが、各バンドあまりにも多様的過ぎるから。だから、最も特徴的であるところの【見た目】で括った結果」じゃないですかって話なんですよ。
てゆーか、見た目の特異性とそこに紐づく世界観が強すぎるんだから、「音楽以外の特徴的なジャンル」として括られるのは、最早不可避じゃんって話w
そこいくと、MALICE MIZERや、そのバンドを抜けたGACKTなんかは、その辺をちゃんとわかっていた感はありましたよね。それをうまく利用していたと思う。
ヴィジュアル系やっておきながら、ヴィジュアル系と呼ばれることを拒むって、逆にすげえダサくないですか。
「おれらポリシー持ってやってっから!アイドルじゃねえから!」って言ったところで、ヴィジュアル系はヴィジュアル系だっつーの。
アイドルじゃない?なら、最前列見てみろよ。同じ格好した女子達がキャーキャー言ってんじゃねえか。アイドルだろ十分。むしろアイドルで何が悪いんだって話。アイドルだって「プロ」だろ。
それをちょっと楽器ができて、セルフプロデュースやマネジメント系を自分たちでまかなってたってだけの、たかだかヴィジュアル系如きが、何を偉そうにアイドルを下に見てるんだって話。
とまあそんな感じで、本書の中でのミュージシャン対談の中では、所謂「第二次ヴィジュアル系バンドブーム」のTOPにいた人ということもあり、一番興味深く読めた。
5. 大島暁美
本書の最後を締めくくる対談は、著者・市川氏と同業者である「大島暁美氏」。やはりぼくの年代だと、V系に明るいメディア関係者と言うとこの2人なんですよねー。
この2人の対談も非常に面白く、それまでのミュージシャン視点での話とは一変した、「V系ライターあるある」的なエピソードなんかも面白かった。
まとめ
やはり、これを読んでいると「hideの喪失」というのが、「V系の一時代の終わりと同義」なんだということがよくわかった。
また、対談形式で尚且つ、自分の好きなジャンルについての本なので、読み終わるのに然程時間なんてかからないだろうし、感想もそこまで時間かけずに書けるだろうと思っていたが、どっちも結構難航してしまった。
※最近、本の感想が長文化してしまい、書くのにものすごくエネルギーを使ってしまう。
それでも、続編である「私もヴィジュアル系だった頃」は既に購入済みなので、そちらも今から楽しみではある。
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