LUNA SEA – LUNACY(7th ALBUM)
2000年7月12日リリース
●シングル
- gravity(12th SINGLE)
映画 / テレビ朝日系ドラマ「アナザヘヴン」主題歌 - TONIGHT(13th SINGLE)
WOWOW EURO2000 サッカー欧州選手権イメージソング
●MEMO
- 締切を設けない「無期限レコーディング」にて、1年近い歳月をかけて作られたアルバム
- 結果的に終幕前のラストアルバムとなっている。
- タイトルの「LUNACY」とは、バンド名と同じ読みだが、LUNA SEA結成前にBs.JとGt. INORANがやっていたバンド名(LUNA SEAの前身バンド)でもある。
- Sweetest Coma Again feat.DJ KRUSH にて、初の外部アーティストとのコラボ。
⇒映画「007 ワールド・イズ・ノット・イナフ」日本版テーマ曲で、本作リリース前に日本版のサントラにも収録されている。
22年前の今日リリース。
このブログでは幾度となくLUNA SEAについて言及してきているけど、その大半にてこのアルバムのことについて何らかの形で言及しているくらい、バンドにとっても大きなアルバムだし、ぼく個人にとっても、非常に思い入れの強いアルバムとなっている。
ということで、例によって全曲レビューをやりたいと思います。
1. Be Awake
SUGIZO原曲
INTRODUCTION的な曲を挟まず、いきなりライブの歓声から始まり、初っ端からTOPスピードで駆け抜けるアッパーチューン。これ、LUNA SEAとしては結構珍しい系統の曲かもしれない。
ここでのJのベースの音とか暴れ方が非常に気持ちいい。
あと、ヴォーカルのリズムキープとか何気に難易度が高い。気を抜いて歌うとすごくダサく聞こえちゃうような、そんな曲。
2. Sweetest Coma Again feat.DJ KRUSH
J原曲
これも今までのLUNA SEAではあり得なかったタイプのナンバー。確実にソロ活動で得たナレッジとエクスペリエンスが、この新たなグルーヴ感をもたらしてくれている。
あと、冒頭のMEMOにも書いたけど、LUNA SEA的には初めて外部アーティストとのフィーチャリングをおこなった曲。ぼくは、この曲がキッカケでDJ KRUSHを知り、後々ハマっていくことになる。
曲としては、いかにもJと言う感じのヘヴィなロックナンバー。
でも、メタルのような重量感の有るヘヴィネスっていうより「力強さ」の方が勝っている感じ。ビートそのものはハネ系というか、よくよく聞くと割とファンキー。テンポが遅いのでそう感じないけど。
あとはやはり、途中のベースソロですよねー。ここはもう最高にかっこいい。LUNA SEAの中での数あるベースソロパートの中でも屈指のかっこよさだと思う。
3. gravity
INORAN原曲
個人的に、INORAN曲の中でも1・2を争うくらい好きな曲だし、LUNA SEAの全楽曲の中でも十指に入るくらいの名曲ではないかと思う。
これ本当にいい曲だなあ。特にサビのメロディがめちゃくちゃいいですよね。ヒットする予感しかしないもの。案の定、オリコンの週間チャートで1位になったみたいだし。
ミディアムテンポで16ビート風の8っていうのも個人的にツボだし、何よりSUGIZOをはじめ、他のメンバーからも非常に評価が高かったポイントとして、「Jのベースアプローチが秀逸だった」という点はやはり見逃せないですね。
8ではなく16でゴリゴリに決めてるところがカッコいい。あと、終盤でのサビのハモり方が、神秘的というか賛美歌的で美しい。
というか、サビのメロディに関しては、非常にSUGIZOっぽいメロディ。SUGIZOの声で脳内再生してもなんの違和感もない。ソロ曲にありそうな感じ。
この曲もベースが鬼かっこいいんですよねえ。
4. KISS feat. DJ KRUSH
SUGIZO原曲
これも、これまでのLUNA SEAとしては結構珍しいタイプの曲。
とは言え、SUGIZO氏は割とこの手のファンキー路線というか、チャカチャカ系のカッティングもいける口の人なので、寧ろSUGIZO節炸裂なところもありますけどね。
後の「BLACK AND BLUE」とか、「Lost World」とかに繋がっていくような曲だなと感じる。(まあLost WorldはRYUICHI原曲ですが)
あと、なんかBOØWY的なビートロック感の面影も垣間見えた気がした。ROUGE OF GRAY的な。
でもやっぱりこの曲も、Jのベースなんですよねえw 間奏のところのアプローチとかたまらん。
5. 4:00AM
INORAN原曲
いきなり「携帯電話の着信音」で幕を開ける曲。
かつてヴィジュアル系バンドだったLUNA SEAの楽曲において、よもや「携帯電話」などという生活感の有るアイテムが楽曲の中に登場する日が来るとは思わなかった。
でもそのくせ、全然LUNA SEAらしさが損なわれていないから、このバンドはつくづくすごいと思う。
で、この携帯電話の着信音は、所謂「ダミーヘッドマイク」と呼ばれる、立体音響を録音するための「全方位型?」のマイクを使って録られていて、何も知らずにヘッドホンで聞いていると、いきなり右斜め後ろあたりから着信音が聞こえてくるので、割と本気でびっくりする。
曲調はINORANらしい、ソフトな曲調で、RYUICHIの囁きのようなアンニュイな歌い方が、ピロートークのような、甘くて気怠い微睡みを感じさせる。
でもやっぱり、またベースの話になっちゃうんだけど、そんな曲でも、恐らくピックで弾いていると思われるガリガリと軽く歪んだベースの絡みつき方が、非常にいい味を出していて、きっとこれ、演奏している側がすごく気持ちいい曲なんだと思う。
6. VIRGIN MARY
SUGIZO原曲
いい曲なんだけど、正直ぼくは余り好きな曲ではないため、いつも飛ばしてしまう。
曲は所謂「3/4拍子のワルツ曲」で、SUGIZO氏のワルツによるバラードというと「MOON」を思い浮かべるところだけど、あちらはカチッとしたビートであるのに対し、こちらは風に揺蕩うカーテンのようなやわからさと透明感にあふれている。
で、その中に、どこか荒涼とした寂寥感も漂っていて、こういう繊細な「風の色」を表現するかのような空間系の曲が、本当に上手いバンドだなと思う。
この辺りの表現力は、技術力だけでは決して表現ができないと思う。この時点でのLUNA SEAだからこそ表現できた、生きた楽曲なんだということを改めて強く実感できる、そんな曲だと思う。
7. white out
INORAN原曲
これもいい曲だとは思うけど、いつも飛ばしてしまう。
これは非常にPOPで、タイトルに引っ張られるわけではないけど、でもイメージとしては「ホワイト」ですよね、やはり。
タイトルの「WHITE OUT」とは、吹雪で視界が真っ白に染められて何も見えなくなるということを恋愛になぞらえて、恋するあまりに「何も見えなくなってしまう」という様を表現しているらしいですね。
そうしたところから、個人的なイメージとしては「冬」とか「雪」のホワイトなんですよね。
ひとしきり雪が降り積もって、吐息の白さの中にかすかな温かみを感じて見つめ合い、微笑み合っている2人、というような優しさを感じる。
8. a Vision
J原曲
これは非常にJ節全開な曲ですよね。
でも所謂「STORM」のような優等生的なロック曲だったり、「ROSIER」のようなわかりやすい不良みたいな感じではなく、「太くて熱くて早くて力強い」という、当時のJやLUNA SEA自体が持っていた全てを総動員して攻撃を仕掛ける、みたいな戦闘曲だと思う。
ベースソロではBOØWYの「WORKING MAN」の時の松井常松を彷彿とさせるような、ほぼルート弾きと言うアプローチが死ぬほどかっこいい。
多分、昔のJだったら1st ALBUM「IMAGE」の「MECHANICAL DANCE」みたいにいろいろ動いたりしてたと思うんですよ。
でも、この時のJは、「お前らをブッ殺すにはこの音だけで十分だ」とでも言うようにどっしり構えている感があって、それが逆にJと言う「唯一無二のベーシスト」という不動の存在感を十二分にアピールしていて、それがもうただかっこいいとしか表現できないんですよね。
あと、途中のラップパートは、音源だとJが一人でやっているけど、ライブだとSUGIZO氏と2人で掛け合いでやっていて、そこがまたくそカッコイイ。
で、最後2人ユニゾンで「You shut the fxxk up!!!」のところとかもうね。
9. FEEL
SUGIZO原曲
RYUICHIのメランコリックな唄に合わせてしっとり系で来るかと思いきや、同じメロディで楽器隊のアプローチが急に裏返しなったように豹変し、SUGIZO氏の稲妻のように歪んだギターや、叩きつけるような真矢のビートとの対比が非常に面白い曲。
このアルバムの中でも1,2を争うくらい好きな曲。
10. TONIGHT
J原曲
物凄くシンプル。こんなにまっすぐストレートな8ビートの曲って、これまでのLUNA SEAにもあまりなかったんじゃないかと思う。
強いて言うなら、メジャー2ndアルバムである「EDEN」の1曲目に収録されている「JESUS(同じくJ原曲)」が、「シンプルさ」という意味では一番近い楽曲な気がする。
あの楽曲も、何かのインタビューで読んだら「徹底的に簡単にしたかった」というようなことをJ自身が語っていたのをうっすら覚えている。
JESUSの時はJ自身がものすごく病んでいた時期だからと言うこともあったが、TONIGHTについては、キャリア的にもピークに達していた時であるが故の「自信の現れ」が、このシンプルなアレンジに現れているのかなと思った。
そういう意味でも、ぼくにとってはこの曲が、LUNA SEAのある種の最高到達点なのかなと言う気もしている。
因みにこの曲自体もそうだけど、PVも含めてL’Arc-en-Cielの「HONEY」にやけに似ているなと思ったら、PVの監督同じ人のようですね。(しかもどっちもサッカー関連のタイアップ曲)
11. Crazy About You
J原曲
これは非常にJらしい、ピースフルなバラード。ソロで歌っていても違和感がない曲だと思う。
というか、具体的に言うと、Jのソロ曲の「WALK ALONG」に非常に近いイメージ。まあ、ソロ曲のほうが後なんですけども。
この曲もいつも飛ばしていたんだけど、↓の動画でのリハーサル風景を見てからちょっと好きになった。
とても終幕直前とは思えないくらい和やかな雰囲気で、この曲での間奏後、ボーカルのみになってから、ドラムが入るタイミングが掴みづらくて苦労している真矢さんがかわいい。
これくらい凄腕のプロでも、意外とこうした基礎的なところで手こずったりするんですよね。それをひたすら練習で凌駕しているっていうのが垣間見える。
プロでもめちゃくちゃ頑張ってるというか、プロだからこそめちゃくちゃ頑張ってるんだということがよく分かる動画だと思う。
まとめ
2010年にREBOOT(再結成)して久しいけど、やはりぼくにとってLUNA SEAは、このアルバムで終わってるんですよねえ。これが最高傑作。
REBOOT後の「A WILL」ももちろんすごく良かったけど、正直このアルバムの「熱量」と言う部分については超えられはしないだろうなと思う。
INORANが「ラストアルバムにしてもいいレベル」と語っていたように、他のメンバーもラストアルバムのつもりで作ったんじゃないかと思う。
なので、このアルバムとBOØWYの「BEAT EMOTION」ってすごく似てると感じるんですよね。熱量と言う意味合いにおいては。
こんな熱くて強いアルバム、生きているうちに出会えることは早々ないと思う。ぼくの生涯史上で十指に残る名盤中の名盤だと思う。