【レビュー:小説】チルドレン - 伊坂幸太郎

 「大人がかっこ良ければ子供はグレねえんだよ」  『チルドレン』は、伊坂幸太郎による日本の小説。テレビドラマ化され、2006年5月にWOWOWの『ドラマW』で放送され、同年11月に劇場公開された。 2016年3月、続編となる『サブマリン』が刊行予定。  ●あらすじ● 「俺たちは奇跡を起こすんだ」独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むがなぜか憎めない男、陣内。彼を中心にして起こる不思議な事件の数々――。何気ない日常に起こった5つの物語が、一つになったとき、予想もしない奇跡が降り注ぐ。

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 短編形式をとっているが「短編の顔をした長編小説」と著者本人も言っている通り、登場人物が一部共通していたり、全てのエピソードに登場する人物もいる。ただやはりそこは伊坂で、何の捻りもないまま、まっすぐ時系列に沿って同じ視点から作品を描くようなことはしない。  まず語り手が各話で異なるのだが、その語り手のすぐ近くには必ず「陣内」という男がおり、コイツが全てのエピソードに登場する人物であることから、「チルドレン」という作品の真の主人公であることが窺える。  そして基本的には、この陣内の「大学生時代」と「その12年後」と「更にそこから1年後」の話になっており、その時系列をあえて崩して書いている所が伊坂らしくて面白い。  伊坂作品を何作品か読んだことのある人なら知っているだろうが、彼の作品には「奔放且つ破天荒で型破り、言ってることも屁理屈だらけなんだけど、でも妙な説得力を持つ男」と言うのが必ずと言っていい程出てくるが、「陣内」とは正しくそうした男で、彼が話をドライブさせていく。  読後に思ったのは、この男こそが正に「伊坂幸太郎」という作家の本性であり、「チルドレン」とは正に「陣内=伊坂」のことなのではないかと思った。要は「純粋そのもの」なのだと思う。陣内が変に型にはまらずカテゴライズされることを嫌う所や、独自の美学を貫き通す姿は、正に作者の小説のスタイルそのものだと思う。  多くの大人達が無くしてしまった大事なものを彼等は持ち続けている。  「大人がカッコ良ければ子供はグレねえんだよ」というセリフがそれを見事に裏付けている。  多分、伊坂幸太郎は、このセリフを言いたいがためにこの小説を書いたんじゃなかろうか。 ■EDIT