めちゃくちゃ面白かった。

おそらく今まで読んできた山口組関連の本の中で、一番面白かったんじゃないかという気がする。そう思わせるくらいに「読ませる文章」だと思った。

あまりにも面白過ぎて、逆に読み終わるまでに時間がかかってしまった。


 目次

  • はじめに
  • 第1部:ある極道の死
  • 第2部:分裂で歪みだした暴力団社会
  • 第3部:三つめの山口組
  • 第4部:ヤクザと暴力団、その歴史的背景の違い
  • 第5部:日本国家と暴力団の行き着く先

全5部の章からなっており、その中で個人的に面白いと感じたのは「第1部:ある極道の死」と第2部と第4部の中で書かれている「ヤクザと暴力団の違いについて」が非常に興味深かった。

 第1部:ある極道の死


「六代目山口組」と「神戸山口組」の分裂以降、「山一抗争」の時ほどの規模ではないことから、「分裂はしているが抗争中ではない」というイメージを持っていた。

けど、実際には割と多くの血が流れて、逮捕者も非常に多いということに驚いた。

※当事者たちは「本抗争は起きていない」という認識だが、警察当局は「抗争状態にあると認定した」という状況だということらしい。

そんな中、「神戸側の舎弟頭」である「池田組の若頭」が射殺されるという事件についてのエピソードが非常に興味深かった。

というのも、ヒットマンによって暗殺されたとしても、極道の世界の場合だと、必ず殺った後に「名乗り」が入るのが通例なのだという。

これは、もちろん単に手柄を得る・アピールするためという側面もあるが、それよりも、いわゆる仇討ちの間違いを防いだり、揉め事の原因や過程を親分達が吟味して、手打ちにするのか戦争に入るのかといったことを判断したりするためという、極めて合理的な理由でもある。

ところがこの事件に関しては「名乗り」がないまま実行犯は自ら出頭したものの、殺害された幹部と実行犯との間では、あまりに立場も環境も違いすぎてて、これまでに接点という接点がほぼ皆無で、およそ動機が見いだせないというものだったらしい。

※当然のことながら、神戸側もメディアも、殺ったのは「六代目側」の中でも屈指の武闘派でもあり、六代目組長「司忍」の出身団体である「弘道会」だろうとされていた。

このことから、鉄砲玉的役割というか「替え玉」として逮捕されたのだろうという憶測が、神戸側はもとより、嫌疑のかかっている「六代目側の別の組」からもかかっていた。

その後、「防犯カメラに写っていた人物像がどう見ても別人」だったり、「犯行に使用された拳銃の捨てた場所があまりにもわかりやすい場所だった」等、あまりにも不可解な点が多いというところで、この辺りのエピソードについては、そのまま映画にでもなりそうな話で、読んでいて非常に面白かった。

 第4部:ヤクザと暴力団、その歴史的背景の違い


「ヤクザ」と「暴力団」は、実は異なる種類のものである、というのが非常に衝撃的だったが、読み進めていくうちに「なるほど」と思った。

というのも、ヤクザの語源も含めたそのルーツについては諸説あるものの、著者は「博徒」にルーツがあるという前提で書いている。

そう考えると博打が伝来してきたのは西暦592年頃の「飛鳥時代」にまで遡ることが出来、そこから少し時代が進んで「平安時代(794年以降)」には、博打自体が定着化したらしい。

そんな中、庶民の博打は中止とする法律が出来上がり、公共賭博だけが許されるという時代になってた。(今の競馬や競輪みたいなもんですかね)

しかもその当時は「天皇」が政権を持っていた時代だったので、当時の「持統天皇」によってその法律が作られたということになる。

で、更に驚くべきことにその「公共賭博」は、なんと「神社やお寺」で開帳されていたというのだから面白い。

で、その賭場の案内人や警備係等のスタッフとして、街の荒くれ者や無職者、ならず者たちが担当するようになったのが「ヤクザ」のルーツらしい。

要は、そういう「当時のアウトローな人間」を野放しにして賭場を荒らされるくらいなら、いっそ取り込んでスタッフとして雇ったほうが安全だろうから、ということらしい。

そう考えると、ヤクザの語源として諸説あるうちの1つである、「おいちょかぶの役(八・九・三)」というのに、信憑性を感じる。

で、その「当時のヤクザ達」は賭場のスタッフ以外にも、「火消し(=消防)」や、「岡っ引き(=警備会社や探偵会社のようなもの)」もやっていた。

で、元々無職だったヤクザの人達がそうした「正業」以外の反社会的な活動(シャブの売買等)に手を染めるようになって、それが後々組織化されたものが「暴力団」であるということなのだ。

つまり、「暴力団」や「消防士」のそれぞれのルーツが、「ヤクザ」と呼ばれる集団であり、「暴力団側」がその「ヤクザ」という名称を名乗るようになったことから「暴力団=ヤクザ」となったのだという。

つまり、それぞれの歴史や伝統が異なる以上、「ヤクザ」と「暴力団」は切り離して考えるべきだ、というのが著者の意見ということだ。なるほどね!これは非常に納得。

 まとめ


山口組の分裂に関する話だけではなく、「ヤクザとはなにか / 暴力団とはなにか」といった歴史的背景まで含めて、ここまで納得感が得られるとは思ってなかったので、非常に目からウロコだった。これをこのページ数でまとめ上げたのは流石だと思う。

著者は元々脚本家だったり、マンガ原作を書いていたりする人らしく、そうしたことからか、特に序盤の射殺事件については、ある意味で小説を読んでいるような気分にさえなった。

(まあ、別に小説的な書き方をしているわけではなく、元ネタそのもののストーリー性によるところが大きいのだろうけど)

とは言え、ぼくがそもそも極道の世界や、山口組分裂騒動に興味を持ったのって、こうした「見てはいけない物を見たい好奇心」にほかならないわけで、これはそれを存分にくすぐってくれる良著だと思います。




 
 

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