非常に面白かった。

何故か横書きで、本のサイズもB6版ではなく「A5版」なので、非常に読みづらかったが、内容的には申し分なかった。

今回は「ヴィジュアル系」だけでなく「J-POP全体」のことについてだったので、自分があまり通ってこなかった部分も含めて、どの項も非常に興味深かった。

と言っても、V系以外のジャンルについては、主にアイドル中心だったのだけど、その中でもとりわけ、著者自身がインタビューする機会の多かった「ジャニーズ系」についての話が非常に興味深かった。

本書をキッカケに、ジャニーズに対する見方が劇的に変わったと言っても過言ではない。

第I講 音楽端末
レコードとCDと音楽配信と人

 §1 きみはレコードを知っているか?
 §2 CD天国
 §3 音楽配信とオマケに成り下がったCDの狭間で

§1 きみはレコードを知っているか?

「レコード」という存在については、ぼくの父親が正に「レコード屋」を経営しているということもあり、かろうじて知っていた。が、その構造的な部分についてまで思いの外詳細に書かれていて、「へぇ~」となった部分もいくつかあって、興味深かった。

その中でもとりわけ、「レコードレンタル業」についての話が面白買った。

今でこそ当たり前になっている「CD・DVDレンタル」は日本発祥なんだけど、とは言え発祥も何も、実はこの「レンタル業」自体が、そもそも日本でしかおこなわれていない業種のようで、歴史的にも意外と浅く、始まったのは1980年なんだそうな。

で、当初は当然のことながら「著作権違反」ということで訴えられたりもするんだけど、後にこれが合法化されるというところが痛快で面白かった。


第II講 多人数ブーム
人だらけが大好きでたまらない日本人考
 
 §1 多人数化現象の賑やかな実態とその背景
 §2 秘密戦隊ゴレンジャーと♀グループアイドル
 §3 さすが多人数されど多人数

§1 多人数化現象の賑やかな実態とその背景

昨今のグループ系アイドルが「多人数化」した背景として「地デジ化が挙げられるのではないか」という話が興味深かった。画面比率がワイドになり、解像度も増したことで、それまで見切れていた範囲もカバーできるようになったと。

そればかりか、奥行きも含めて鮮明な画像で移すことが出来たことで、「映える」ようになったことで促進されたのではないかというのは興味深かった。


§2 秘密戦隊ゴレンジャーと♀グループアイドル

グループ系女子アイドルに、「戦隊モノの色分け」の概念を見出すという考察自体は別に珍しさはないけども、単純に顔と名前を売る際に「色分けしていたほうが覚えてもらいやすいから」というのは、個人的に盲点だった。言われてみりゃ確かにそうだね。

ただ、すごく意外だったのが「ジャニーズ」で、戦隊モノの概念として捉えるなら、むしろ男子であるジャニーズほどその要素を取り入れていそうなのに、それをしているグループがほぼ皆無なのがこれまた面白い。


§3 さすが多人数されど多人数

この部分の考察も非常に面白かった。

「アイドル」と呼ばれる存在は70年代後半くらいから始まっていて、その頃はグループ系アイドルというものはほとんど存在しておらず、大半が「ソロ」だった。(山口百恵・松田聖子・中森明菜・小泉今日子etc)

で、この時代はアイドルに限らず「歌手・芸能人」とは、「お金を取れるレベルのものだけがステージに立ち、テレビに出れる」というような時代だったため、どの歌手も概ね歌唱力やパフォーマンス力が高かった。

ところが、80年台に入り、アイドル氷河期が数年続き、「どこにでもいそうな女子大生アイドル」をコンセプトとした低クオリティな多人数アイドルグループ「おニャン子クラブ」の登場による、「若さゆえのチャラいノリと勢いによる数の暴力」がこの時始まる。

で、それも一頻りブームが終わったあと、「安室奈美恵」に端を発する「沖縄アクターズスクール系」による「歌&ダンススキル重視志向」にシフトしていくさまを「おニャン子の後始末」と評しているところが市川さんらしいなと思った。

第III講 集団女子アイドル
AKB48とももクロはどっちが強いのか

 §1 AKB48戦記
 §2 ももいろクローバーZの掌

ここも非常に面白かった。過去のコラムを引用していたのだけどこれも市川氏らしくて非常に面白かった。

例えば、AKB48のことは「うわ!沢山いる!」的一発ギャグで、「マッチ棒で作った巨大姫路城の模型」とか「全部倒れるまでに30分かかるドミノ」に近い「数のカタルシス」であるとw

片やももクロについては、「100mのスピードのままフルマラソンを完走するような、自虐的なまでのアスリート性」とした上で、その様を「初期のX JAPAN」とダブらせているところがなるほどと思ったw

確かにそう考えると、市川氏の言うように、ももクロって「ほぼロックバンド」だと思う。

第IV講 V系
<捨て身の美学>に見えたヤンキーとオタクの邂逅

 §1 X・LUNA SEA・ラルク・GLAY オールV系怪獣大進撃
 §2 逆襲のヤンキー文化
 §3 YOSHIKI伝説と書いてV系と読む
 §4 知られざるV系遺産たち
 §5 ゴールデンボンバーのV系オタク化大作戦
 §6 蘇る市川哲史の酒呑み日記

このインデックスだけを見ると、先の「ヴィジュアル系だった頃シリーズ」と内容的には一緒かなと思うんだけど、そうじゃなかった。※関連過去ログ


あちらは「ヴィジュアル系」というシーン全体を俯瞰的に当事者同士で語り合っているため、読み手がそれを知っている前提だったのに対し、こちらでは「ヴィジュアル系とは何か」という「大まかな定義」についてわかりやすく解説するところから始まる。

その中で、V系の音楽的特徴として「1:過剰さ、2:わかりやすさ、3:雑食性」の3店に尽きると書いていて、なるほどと思った。確かにそのとおりだ。めっちゃわかりやすい。兎に角彼らは「足し算の美学」だから。

§2 逆襲のヤンキー文化

この項については、先の「ヴィジュアル系だった頃シリーズ」でも触れられており、要は「V系とはヤンキー文化の産物である」ということなんだけど、「V系とギャルは兄妹関係にある」という分析も流石だと思った。確かに言われてみるとそうかもしれない。


§5 ゴールデンボンバーのV系オタク化大作戦

しかし、ゴールデンボンバーを、そんなヤンキー文化の産物であるV系の「最終形態」であるとした分析も非常に面白かったのだけど、この項で興味深かったのは、メンバーである「歌広場淳」の下記引用の言葉。

『ステージ上ではこうだけど、普段はこんなにおちゃらけた気のいい兄ちゃんなんだよ?』みたいなブログとか書いちゃうから、どんどん人の子になっていくわけで。いつの間にか、『皆と何も変わらない』ことが受け入れられる要因になってて――だから本当の意味のV系とは乖離しているんです。『普段から薔薇の風呂に入ってるぜ』みたいな嘘を付くのが、V系の仕事なのに

この引用を用いて、「特殊であることがアイデンティティーだったはずのV系が、日常を見せることに必死だとは、なんとも情けない話」というところが市川氏らしいですね。ホント、そのとおりだと思う。


第V講 ジャニーズ
世界に一つだけのポップカルチャーから学ぶこと

 §1 コンサートが物語るジャニーズイズム
 §2 ジャニーさんの理念、ジャニーズの作法
 §3 SMAPだ! KinKi Kidsだ! 嵐だ! ジャニーズ三英傑
 §4 あしたのジャニーズ

§2 ジャニーさんの理念、ジャニーズの作法

個人的に本書の中でもっとも興味深かったのはこの項で、ジャニーズは決して「お仕着せ」で何もかもお膳立てしてもらって、楽な道を歩んでいるわけではないということだった。

特に印象深かったのは、ジャニーズのコンサートの特徴として、「個々のセルフプロデュース力の高さ」というものを挙げており、なんでも、自分たちのコンサートの企画・立案・構成・演出に、タレント自身が積極的に参加しているというのだ。

総合演出はもちろん「ジャニー氏」なんだけど、原則的にはメンバーから持ち込まれたアイデアに対しジャニー氏は「ユー、やっちゃいなよ」で可決されるんだとか。

ジャニーズって言うと、「用意された楽曲をただ歌って踊るだけで、ルックスだけで選ばれてるんだろ?」と、特に楽曲を「自炊」しているロックバンド連中はそういう色眼鏡で見るんだけど、これは大きな間違いだったということだ。

また、Jr.の子達が最初に教わるのは「衣装のたたみ方」を始めとする衣装の扱い方だそうで、「脱いだらすぐにハンガーにかけろ」とか「衣装のまま地べたに座るな」というところを叩き込まれるらしい。

また、ジャニー氏がタレントを選ぶ資格についても非常に興味深く、その中において、「スポーツの嫌いな子を選ばない」というのと「歌はよほどのことがない限り問題にはしない」という点を挙げていた。

要は歌唱力よりも運動神経(=ダンス力)を重視しているということらしい。

市川氏も本書の中で書いているけど、そう考えた時「SMAP」が「Sports / Music / Assemble / People(スポーツや音楽をやるために集められた人々)」という意味なのは、ジャニーイズムそのものであるということだ。


まとめ

ほかには下記について書かれており、そのどれもが興味深かったが、長くなるので、このへんで止めておく。

第VI講 小室哲也とJ-POP
馬鹿みたいにCDが売れた季節へのラヴレター

 §1 なんだったのかビーイング
 §2 小室哲也はなぜ天下統一できたのか
 §3 TKバブル崩壊、そして新たなる地平

第VII講 K-POP来航
音楽ではないからこその新型ポップミュージック

 §1 東方神起に見る、J-POPとしてのK-POP
 §2 少女時代以降の、洋楽としてのK-POP
 §3 K-POPとJ-POPのいろんな「差」

第VIII講 バンドブーム
日本中の少年少女が楽器を抱いた日

 §1 やっと市民権をもらえた日本のロック(泣)
 §2 これがバンドの生きる道
 §3 事件ありロマンスありのバンドブーム・ファンタジー

あとがき

興味のある人は、下のリンクから是非購入してみるといいと思う。





 
 

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