勝負論 ウメハラの流儀 (小学館新書)
梅原 大吾
小学館
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面白かった。

前回・前々回のレビューも「ゲーム」に関する本ということで今回はその第3弾。

著者は「日本初のプロゲーマー」である「梅原大吾」氏。前々回「高橋名人」はゲームメーカー側の人であると同時に「名人」の名を持つ「プレゼンター」。次の「フジタ」さんは「ファミコン芸人」という特殊な肩書の、「カルトコレクター」。

そして今回の梅原氏は、「e-SPORTS」としての「プロのゲームプレーヤー」と、同じ「ゲーム」というジャンルであっても、それぞれ立場が微妙に異なっている。

とりわけ彼の場合「勝負」という緊張感の高い世界において、「賞金を勝ち取る」という立場であるからして、両者とは圧倒的に異なる。

この本は、そんな彼の「勝ち続けるとは何か」ということについて、苦しみもがき、葛藤しながら自問し続け、たどり着いた答えについて、彼自身の言葉で語られている美学・哲学としての「勝負論」である。


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「プロゲーマー」という立場ではあるけど、テーマそのものは「勝負」ということに主軸を置かれて書かれているため、内容的には自己啓発的な側面が強い内容となっており、実際、ビジネスパーソンからの評判も高いとのこと。

このため、e-SPORTSに全く興味がない人や、彼のことを知らない人でも十分に参考になるようになっている。

ざっくり言うと

「勝ち続ける」ということよりも、1回1回の勝負から学びを得て、「いかに自分が成長し続けることが出来るかが重要」ということだった。

このため、「目標は?」と問われても、彼自身に「具体的な目標」というものはなく、あるのは「毎日来る日も来る日も、自分を成長させるリズムを維持することが該当する」と語っている。

更にはその目標設定自体が、時に「ドーピング」にもなりえてしまう危険性についても説いていて、明確に日時や具体的な「数字」を設定した目標があると、それが大きければ大きいほど、達成した後に成長のペースが緩んでしまうのだという。

なるほど。所謂「バーンアウト現象( 燃え尽き症候群)」のような状態になるということだろうか。ダイエットにおける「リバウンド」のように、いっときむちゃくちゃ頑張ると、何かの拍子にその緊張が解けた時に一気に緩んでしまう。

それならば、常にいいパフォーマンスが出来るように、一定のペースを保つほうが重要と言うのは非常に説得力があると感じた。

また、「勝つことにこだわり続けることで、結果勝てなくなる」という話も、結局、勝敗に関係のない「1回の対戦(勝負)から何を学んだのか」という本質を見失うとそうなってしまうということなのだろう。

勝負事にこだわり、それに疲れ勝負の世界を捨て、再び戻ってきた彼だからこそ説得力のある美学・哲学だと思った。

また、「ネガティブな感情を否定するのではなく、それをうまく利用する」というようなことも言っていて、これについては「ダイゴ」違いである「メンタリストDaiGo氏」も同じことを言っていたので、納得感がものすごく大きかった。

「メンタルの強い人」や「ポジティブな人」なんていないと思う。

「メンタルの強い人」とか「ポジティブな人」とかよく言いますけど、ぼく自身、特にここ最近すごく思うんですけど、ある意味でそんな人っていないと思うんですよね。

どんな人間にだって、繊細な部分やネガティブな部分ってのは必ずあるし、何なら本質的には皆弱いと思うんですよ。だから「人はひとりじゃ生きていけない」とか言うわけでしょ?

特に「松岡修造さん」なんかは、「みんなが思うポジティブの日本代表」みたいな人だと思うんだけど、ぼく、あの人って実は「すごく繊細でネガティブ気質」なんじゃないかと思ってて。

だってそうじゃなきゃあんなに「できるできる!」とか言わないと思うんですよね。あれ、目の前の相手に言いながらも自分に言い聞かせてるんじゃないかとさえ思う。

だから、それを力技でねじ伏せようとしたって無駄だと思うんですよ。勝てるわけがない。だからそれとうまく向き合いながら「自分を許してあげて」コントロールしていくのが大事ってこと。

今なにかに立ち向かおうとしている人や、なかなか成果が挙げられずにもがいている人ほど、この本はおすすめです。

※関連過去ログ
 心が折れてしまうのは「忍耐」で踏ん張ってるから。必要なのは「強靭なメンタル」ではなく「しなやかな心」

■EDIT